『欺す衆生』月村了衛
おはようございます😊
『欺す衆生』月村了衛
欺すことを生業とする詐欺師は時代に応じた手口で人を欺す。(だます)
この本に出てくる手口は、原野商法、和牛商法、投資詐欺、水源地詐欺、結婚詐欺、M&A詐欺(企業買収仲買)・・
始まりは、昭和60年大阪で実際に起きた「豊田商事会長刺殺事件」、私のような年代だと記憶に残っている事件だ。
当時、マスコミのカメラの前で生放送中に突如起きた殺人事件、この現場に居合わせたとされる”隠岐隆”が主人公、会社名は「横田商事」と、して物語が始まった。
隠岐は親戚に欺され借金を抱え、5ヶ月前に横田商事が悪質な詐欺商法を働いていると知りながら30万円の固定給と10%の歩合に惹かれて入社してしまっていた。
事件後、隠岐は改めて、まっとうな仕事に就くが成績が全く上がらない。そんなとき「元横田商事」の残党、”因幡充”に目をつけられ詐欺へと引きずり込まれる。
この2人が標的にするのは強欲である金持ちたけだ、「オレオレ詐欺」のような年寄り相手は禁じ手とした。そこには横田商事(豊田商事)が行っていたテレホンレディーの存在があった。片っ端らに電話をかけてカモに儲け話を吹き掛け営業のアポイントを取る。営業は家に上がったらカモを逃さない言葉巧みに契約させる。ここには、”落とし”のマニュアルがあり現在の闇社会のバイブルとなっているらしい。同じ事をやっては横田(豊田)の二の舞だ、と禁じ手としたのだ。
しかし、欺す、嵌まる、とはどう言う事なのか?「欺す」とは相手を信用させること。「嵌まる」のは被害者自らの欲望で足を踏み入れること。
この2人の商法には手に触れる現物が有るものは安価なものを高く売りつけ、全く現物が無い物は紙切れだけで取引を行う。そんな商法は投資目的で金を集め、(豊田商事とは違い)決められた期日には配当金を支払う。解約にも応じる。配当金や解約金は、次々に欺した金で返金していく。ここには詐欺商法の大きく成りすぎた限界点があり、そこに近くと次の詐欺で補てんしながら、徐々に廃業させる。
これを循環させるには規模を大きくするしかない。次第に拡張する企みには闇の世界の人間とも付き合わざる負えないが、腹を括れば力のあるパートナーにもなる。腹黒い政治家や反社組織、さらには海外マフィアまでが絡む事になる。元横田商事の残党を迎え入れ、この残党だけが詐欺を実行し一般社員は何も知らず、表向きは優良企業を演じている。更に、仲間同士の欺し合いや殺害で徐々に最も優れた極悪人が統制されていく。
終盤に企む詐欺で「水源地詐欺」があり、現実に記事にされた、こんな話しもある。
『中国資本による水源林の買付という話は保守系のシンクタンクに天下っていた元公務員が言いだしっぺです。当時確かに外国資本による森林の取得は件数は増加していましたがニセコや軽井沢などのリゾート地は基本でした。そうした事実をスポンサーである保守系シンクタンクの好みそうな「中国脅威論」で骨頂したのが「中国資本による水源取得論」です。そもそも水の利用権は土地を買っても取得できません。大々的に地下水を掘るにしても1ha以上の林地開発は都道府県知事の許可制ですので、ここでもストップがかけられます。ともあれ「中国による水源取得」は中国脅威論を補強するために意図的に流されたものでしょう。それどころか森林を取得した中国の方々は、日本の悪徳不動産業者の「原野商法」被害者である可能性すらあります。日本人に対して「中国人が水源を取得しているから、防衛のために森を買いませんか」みたいな原野商法まで現れました。』
引用https://togetter.com/li/571446『togetter』 2019,10/31
しかし、今でも外国人(中国、韓国など)に土地を変われているのは事実のようです。
『日本では外国人でも土地を買える上、登記が義務ではありません。諸外国ではあり得ないことです。投資目的の外国人にとって、誰が買ったのかを秘匿できる日本の土地・不動産は、マネーロンダリングや資産隠しの手段としても使いやすいんです。』
引用https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/ 『MSNニュース』2019,10/31
話しが逸れたが、詐欺師とは世の中をぼんやりと映し出す曇った鏡だ。詐欺師が詐欺を立案していると言うより、今と言う時代が詐欺師を動かしている。詐欺師達は、少なくとも自分の仕事は、これからの世界のありようと不可分であるはずだ、と思い込んでいる。
私は騙されないと思っている人こそ注意した方が良いだろう。詐欺師は人を信用させるプロフェッショナルだ。信用出来ない社会とは実に悲しいが、以前読んだ「⚪⚪の商法」も紙一重、首の皮一枚と言った印象だ、契約に厳密で重視しながら法律にも従う。家族すら信頼せず数字(金)だけを信じる。
人が人を欺し、国が国を欺し、国が人を欺す。それが世界の実相なのだ。
詐欺師は言う、「国が人を欺す事の悪質さに比べれば詐欺師の仕事などいかほどのものだろう」と。
人を見抜き、人を操り、自分だけが狡猾に罪を逃れる。それも無意識的な本能として捕まらない巧妙な詐欺師達は今も金を循環させているのだろう。