飯島企画業務日誌

『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治

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おはようございます☀️

 

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『ケーキの切れない非行少年たち』宮口幸治
宮口幸治氏は児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務し、多くの非行少年達と出会うことで「反省以前の子供」が沢山いると言う事に気がつきました。
非行化した少年達に対してどのような教育が効果があるのか、同じようなリスクを抱えている子供達にどのような教育が出来るのか。
こうした問題意識を共有し、加害少年への怒りを彼らへの同情に変えることによって少年非行による被害者を減らし、犯罪者を納税者に変えて社会を豊かにする事は出来るのか?

医療少年院では、なぜ非行をやったのか、被害者に対してどう思っているのか?と少年に問いますが、そもそも何も感じていないのでした。
非行のタイプは窃盗、恐喝、暴行、傷害、強制猥褻、放火、殺人、等の犯罪を行った少年達は何らかの発達障害を抱えている、と言います。
発達障害(知的障害)は3つに分けられ、IQ<35は重度精神遅滞、IQ35~50は中度精神遅滞、IQ50~70は軽度精神遅滞とされる。(標準はIQ 100)
更に、病院で診察して貰っても「知的には問題ない」と判定される境界知能(IQ70~84)はこの判定で”怠けているだけだ”、”性格の問題だ”、”育て方が悪いのでは”と、子供へ厳しく指導したり、親を責めてしまう。
発達障害(知的障害)とは、18歳までの発達期に生じる知的発達の遅れにより、社会生活に適応する能力に制限がある状態のことです。
障害を抱える彼らには「世の中すべてが歪んで見えている」のです。
彼らの特徴は、簡単な足し算や引き算が出来ない、漢字が読めない、簡単な図形を写せない、短い文章すら復唱できない。
最も苦手なことは「勉強」「人と話すこと」と子供達は言うそうです。

現在の支援スタイルは「いいところを見つけ褒める」「自身をつけさせる」と言うもので、子供の能力に凸凹があると、苦手なことはそれ以上させると自信をなくすので、得意なところを見つけて伸ばして褒めてあげる、と言う方向に行きがちですが、苦手なことをそれ以上させないと言うのは、とても恐ろしいこと。
褒めるだけでなく困難に立ち向かう思考や感情をコントロール(ストップ)出来る能力を身につける事が大切になる。
犯罪への反省以前の問題で少年達がどれだけの挫折を経験し社会がどれだけ生きにくかったか。学校ではその生きにくさが気づかれず特別な配慮がされず、不適応をお越し非行化し、少年院でも理解されず非行に対してひたすら「反省」を強いられていた。

計画が立てられない、見通しが持てない、行き当たりばったり何でも思いつきで行動する。実行機能が弱いと、より安易な方法をとり、後先を考える力の弱さから「盗む、騙しとる」。
そもそも反省が出来ず、葛藤すらもてない。少年院に来てみてどう感じているかと尋ねでも、ニコニコして「まあまあ」「楽しい」と答え、そもそも自分が置かれている立場が理解できていない。

彼らは感情を表す言葉として「イライラする」しか知らない。寂しい、辛い、怒り、思い通りにならない、事などが「イライラする」でしか、表現出来ないのです。

認知機能の弱さ…見たり聞いたり想像する力が弱い為に誤解が生じる。そして、努力しなくなり成功体験や達成感が得られず自信が持てず自己評価が低くなる、と同時に他人の努力も理解できない。
感情統制の弱さ…感情をコントロールするのが苦手で、すぐに「キレる」。感情統制が出来ないと認知機能も働かないため、感じかたや受け取りかたの違いが問題となる。
融通の利かなさ…何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い、頭が硬い。遂行機能は実行機能とも呼ばれ、日常生活で問題が生じた際に、それを解決するために計画を立て効果的に実行する能力が彼らは弱いのです。
不適当な自己評価…自分の問題点が解らない、自信が有りすぎる、無さすぎる、棚に上げる、犯罪を犯した自分をやさしいと思っている、ブライドが高い、又その逆。
対人スキルの乏しさ…人とのコミュニケーションが苦手、嫌なことを断られない、助けを求められない。
+1身体的不器用さ…力加減が出来ない、物をよく落とす、左右が解らない、姿勢が悪い、じっと座っていられない、身体の使い方が不器用、自分の意識が身体と連動せず行動がずれる。

認知機能とは、記憶、知覚、注意、言語理解、判断、推論で反省させるよりも本人の認知力を向上させることが重要なのです。
認知機能の弱さが対人トラブルにつながる。
見る、聞く、想像する力と言った認知機能の弱さの為、相手の表情、不快感、その場のの雰囲気が読めない。相手の話しを聞き取れない、話しの背景が理解できず会話についていけない。行動した先のことが予想できない。うまくコミュニケーションがとれずイジメに遭ったり、友達が出来ないので悪友の言いなりになる、嫌われないよう、認めてもらう為、と言った方向へ非行につながる可能性が生じる。非行化は彼らなりの生き残りの手段だったりするのです。
気が弱く流され易くて何でも悪友の言う事を聞いてしまう、ある意味「やさしい子」程、非行に走る傾向もある。
発達障害や知的障害のために対人スキルが乏しく、イジメ被害に遭い、さらに性非行に繋がって被害者が加害者になる瞬間です。
発達障害を持つ子供達はサービス業より建築現場の肉体労働に就く傾向が有りますが身体的な不器用さが就労のハードルとなり、仕事が続かず再非行のリスクを高めているのです。
身体的不器用さには、発達性協調運動症と言った疾患概念があります。協調運動とは、別々の動作を一つにまとめる運動です。
サインの出し始めは小学2年生からで、保護者にもなかなか気づかれない。
そして高次機能障害はIQには問題が無いので周囲になかなか理解されません。

では、どのように子供達に教育すれば良いのか?
ワーキングメモリーを含む認知機能向上への支援として有効な、「ゴクトレ」(認知機能強化トレーニング)について紹介されています。このトレーニングは医療少年院で5年の歳月をかけて開発され、一定の効果がすでに得られているものです。
「覚える」「教える」「写す」「見つける」「想像する」の5つトレーニングからなっています。教材はワークシートを利用し、紙と鉛筆を使って取り組みます。1つだけご紹介します。
6本の500mlの内5本のペットボトルに水を入れ「苦しい」「怖い」「悲しい」「不安」「寂しい」と書いて、一本は空で「うれしい」と書いて、蓋をします。そして、2リットルの大きなペットボトルには「怒り」として、水を入れます。これらペットボトルを全てリュック(袋)に入れて子供達に担がせます。
次に一本ずつペットボトルを袋から出して行きます。すると少しずつ身体が楽なり「気持ちを出すことで楽になる」ことに気づかせ気持ちを表現することの大切さを体験させるのです。
「怒り」を抱え込むのが一番しんどい、怒りを外に出す時には親や先生にそっと渡しなさいと伝えるそうです。そうですね、「怒り」をそのままに袋から”投げ出せば”他者を傷つけることになる。不の感情は重く、「怒り」は更に重い。不の感情は信頼できる人に相談しなさいと言うことですね。
大切なのは”自己への気付き”で様々な体験や教育を受ける中で”自己評価の向上”得ること。
自己についての「気づき」は、押し付けでなく子供達自身の「気づきのスイッチ」を入れねばなりません。

「宮口幸治」氏は自ら「ゴクトレ研究会」を立ち上げ各種研修会を行っているそうです。
詳しくお知りになりたい方は「ゴクトレ研究会」ホームページで検索するか、『ゴクトレ-みるきく想像するための認知機能強化トレーニング』で、市販されています。
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