飯島企画業務日誌

『閉鎖病棟-それぞれの朝-』

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おはようございます😊
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『閉鎖病棟-それぞれの朝-』
山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生のベストセラー小説を
平山秀幸監督・脚本で映画化。
ここで描かれるのは、社会から疎外され、隔離された弱者たちが、それぞれの道をもがき苦しみながら模索していく、いわば今を生きていく上で必要なものを示唆させてくれる秀作です。

この映画は、死刑囚・梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)の死刑執行から始まります。首にロープがかけられ、一気に足場を奪われ……。しかし、まもなくして係員の手でロープから解放された彼は、まだ死んでいませんでした……!?
続いて舞台は、長野県にある精神科病院へ。そこには大小さまざまな心の傷を負った人々が入院しています。
元サラリーマン、チュウさんこと塚本中弥(綾野剛)もそのひとり。普段は問題なく日常生活を送れる彼ですが、時折聞こえる幻聴によってパニックを引き起こしてしまうのです。
またその病院の中には、死刑執行の際に脊髄を痛めて車椅子生活を余儀なくされている秀丸もいました。国家権力は死刑が失敗した事実を世間に隠すべく、彼をこの病院に隔離しているのです。
ある日、義父の暴力がもとで心を病む女子高生の島崎由紀(小松菜奈)が入院してきました。チュウさんや秀丸をはじめ、院内の人々の多くは彼女に優しく接していきます。
世間から閉ざされた世界ではありますが、それゆえに由紀は院内での生活に心の平穏を見出すようになっていきます。しかし、ある日院内で衝撃的な事件が……。
本作は先天性後天性を問わず、心の傷を持つがゆえに社会から疎外されがちな弱者によって織り成される集団劇です。
一応の主人公はチュウさんで、一般常識の感覚を日常的に持ちあわせながらも時折病のスイッチが入ってしまう、そんな彼の目線が入ることによって、常識と非常識のはざまに終始立たされながら生き続けなければならない人間の苦悩が明確になるとともに、心無い人々から迫害されることもままある弱者への慈悲が明確に示唆されていきます。
また、そんなチュウさんを含む入院患者らを大きく包み込んでくれているのが秀丸で、おそらくは院内で一見もっともまともに映えつつ、一方ではかつて死刑になるほどのおぞましい罪を犯した彼の二面性は、そのまま人間の光と闇を体現しています。
そして本作は理不尽な暴力の数々によって深く心傷つけられた由紀の苦悩と、それを凌駕しようともがく葛藤などによって、人はどこまで強くなれるのか、強くなれないのか、強くならなくてもいいのか、などが問われていきます。
そして最終的には、閉ざされた病棟の中に生きた3人それぞれは、深い闇の中からどのような朝を迎えることができるのかを描きつつ、見る者それぞれにも美しい心の朝が訪れるよう示唆していく。
秋も深まり始めて朝晩冷え冷えとしていく中、ふと気が緩んで心寒くもブルーな趣きに陥ってしまうことは誰しも経験あることかと思います。
特に弱者に対して総体的に冷たくなり始めて久しい現代社会において、日頃はさほど問題なく暮らしていても、ふとしたことでほころびが生じ、そこから一気に過酷な日々へ転じてしまう昨今の過酷さは、先日の台風をはじめとする天災の惨禍や、それに対する政治の杜撰な対応(および礼を欠いた上から目線的な非常識発言の数々)などからも明らかでしょう……。
心晴れない日々が続く中、弱者が生きていくための勇気を与えてくれました。人間と社会について改めて考えていく上でも必見の作品です。

記事引用https://cinema.ne.jp/recommend/heisa2019110209/

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