飯島企画業務日誌

『素晴らしい新世界』オルダス・ハスクリー著 大森望 訳

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おはようございます😉

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『素晴らしい新世界』オルダス・ハスクリー著 大森望 訳
サピエンス全史からの流れで本書を手に取った。1932年に発表したディストピア小説。デストピアとはユートピア(理想郷)の正反対の社会で、一般的には、SFなどで空想的な未来として描かれる、否定的で反ユートピアの要素を持つ社会という着想で、その内容は政治的・社会的な様々な課題を背景としている場合が多い。
西暦2049年に「九年戦争」と呼ばれる最終戦争が勃発し、その戦争が終結した後、全世界から暴力をなくすため、安定至上主義の世界が形成された。その過程で文化人は絶滅し、それ以前の歴史や宗教は抹殺され、世界統制官と呼ばれる10人の統治者による『世界統制官評議会』によって支配されている。この世界では、大量生産・大量消費が是とされており、当時のT型フォードの大量生産で名を馳せた自動車王フォードが神(預言者)として崇められている。
人間は受精卵の段階から培養ビンの中で「製造」され「選別」され、階級ごとに体格も知能も決定される。それぞれの階級に不満が起こらない様に細工し、あらゆる予防接種を受けているため病気になる事は無く、60歳ぐらいで死ぬまで、ずっと老いずに若い。ビンから出て「出生」した後も、睡眠時教育で自らの「階級」と「環境」に全く疑問を持たないように教え込まれ、人々は生活に完全に満足している。不快な気分になったときは、「ソーマ」と呼ばれる薬で「楽しい気分」になる。人々は、激情に駆られることなく、常に安定した精神状態である。そのため、社会は完全に安定している。ビンから産まれるので、家族はなく、結婚は否定され(フリーセックス)、人々は常に一緒に過ごして孤独を感じることはない。隠し事もなく、嫉妬もなく、誰もが他の”みんなのため”に働いている。「誰もがみんなのもの」一見したところではまさに楽園であり、「すばらしい世界」である。
仕事はどういう風に割り振られているかというと、生まれる以前から操作され階級が、上層から”アルファ”、”ベータ”、”ガンマ”、”デルタ”、”エプシロン”其々に+、-が付く階級に分かれている。それぞれ階級ごとに違う色の服を着て、”ボカノフスキー法”と言う、クローンを何十人もたくさん作る。同じ顔の人々が、何の疑問もなく辛い仕事をする。自分の階級が最善で上でも下でもなくて良かったとそれぞれが思っている。
その中でもこの新世界に違和感を持つ上層の人物も現れる。同調出来ないのは育成の段階の不備と誤解され、周りと馴染めずにいる。劣等感を抱えてしまった男、あるいは優秀すぎる男。
そんな中”蛮人保存地区”に出掛けある親子と出合う、この蛮人保存区とは、つまり普通に結婚して、出産してという風に、私達の社会と同じようなやり方で暮らしている所。そこでジョンと出会い、”ジョン”を新世界に連れて来る。
終盤における、世界統制官モンドと野蛮人ジョンの対話は精神浄化の問題を引き起こす場面ではあるが、生まれも育ちも社会的地位も違う人間が理想社会を巡って意見をぶつけ合う。
世界統制官との問答の後、フォークランド諸島へ島流しとなるバーナードとヘルムホルツと別れた後、ジョンは都市を離れ、田舎の廃屋で一人自給自足の生活を送ろうとするが…。
現代の民主主義も似たような所がある。
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