飯島企画業務日誌

『ミラーワールド』9/12

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おはようございます😉

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『ミラーワールド』9/12
ミラーワールドにおける物体の捉え方はもうひとつある。物体は二重の用途をもち、異なる状況では違った役割を演じるのだ。鉛筆を手にとって、魔法の杖として使うこともできる。テーブルをタッチスクリーンに変えることだって可能なのだ。
物体の位置と役割だけでなく、時間に干渉することもできるようになるだろう。例えば私がハドソン川沿いを歩いているとしよう。本物のハドソン川だ。わたしは鳥の巣があることに気がついて、バードウォッチング好きの友人に知らせたいと思うとする。そこでわたしは友人宛てのバーチャルなメモを川沿いのその小道に残していく。そのメモは、友人がそこを通るまでずっとそこに残っている。
「ポケモンGO」と同じ現象で、ヴァーチャルな創造物がリアルな物理的ロケーションに残り続け、誰かに見つけられるのを待っているのだ。ミラーワールドにおいて時間とは、調整可能な次元となる。現実世界とは異なるが、ソフトウェアのアプリケーションの世界とは非常によく似ていて、時間をスクロールして巻き戻すことができる。
「歴史」は動詞になる。スワイプひとつで、時間を遡れて、どんな場所であっても、その地でそれ以前に起きた出来事を見られるようになる。例えば19世紀の景色を、現在のリアルな景色に重ねて再構築することができるだろう。その土地で時代を遡るには、データーに残っている過去のバージョンに立ち戻ればいい。ミラーワールドそのものがワードやフォトショップのファイルのように、「元に戻る」機能を保持しているのだ。もしくは、それとは反対に「進む」機能にスクロールすることもできる。
アーティストたちは、その場所の未来バージョンをその場につくりあげるかもしれない。手づくりで構築した世界がまるで現実そっくりなのは革命的なことだ。こうした前スクロールのシナリオは、リアリティをいっそう増すことになるだろう。というのも、それは今この瞬間の等身大の世界から生まれるものだからだ。そういう意味では、ミラーワールドとは4Dの世界だと言うのが妥当かもしれない。
脱中央集権化モデルに向けて
これまでのウェブやSNSがそうだったように、ミラーワールドが展開され成長するにつれて、意図しなかった問題や、思ってもいなかった恩恵を生み出すだろう。まずビジネスモデルから見てみよう。我々はまたもや、広告モデルという近道でこのプラットフォームをジャンプスタートさせようとするだろうか? おそらくそうだ。わたしはインターネットの商用利用が禁止されていた時代を知っている世代だ。そしてそれは、成長するにはあまりにも禁欲的だった。商用利用なしのミラーワールドは実現不可能であり、望むべきでもないだろう。ただし、もし人々の注意を集めることが唯一のビジネスモデルとなるのなら、それは悪夢となるだろう。なぜならわれわれの関心は、この世界では遥かに高い解像度で追跡され操作され得るからだ。そこでは人々は容易に搾取の対象となってしまうだろう。

記事画像https://wired.jp/special/2019/mirrorworld-next-big-platform(雑誌『WIRED』日本版VOL.33より転載)
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