飯島企画業務日誌

『暴力の人類史』㊤スティーブン・ピンカー/幾島幸子・塩原通緒‥訳

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おはようございます😉

 

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図書倶楽部
『暴力の人類史』㊤スティーブン・ピンカー/幾島幸子・塩原通緒‥訳
まず、私たちの現代におけるモラルと当時のモラルに大きな差があることを指摘する。物凄い情報量と図表で綴る。
人類史の暴力という視点から凄まじいデータセットから俯瞰して観察、どういった経緯で暴力の連鎖を乗り越えてきたかを現代まで継続され暴力が激減してきたか?を鋭く分析した。生物学を大きく6つの段階に分けて論じる。
①少人数の”狩猟採集社会”から大集団の”農耕社会”への移行により、日常的な襲撃が減少
②封建領土が王国に統治され領土内での争いが減少
③啓蒙主義により奴隷制や残虐な拷問を減らす運動が起き文明化のプロセス
④冷戦終結によるイデオロギーの対立の解消による人道主義革命
⑤冷戦終結後のジェノサイドやテロの減少による”長い平和”
⑥世界人権宣言後の少数民族・女性・子供への小規模な暴力への嫌悪感の高まりによる”新しい平和”
20世紀が最悪だと思い込むのは歴史的近視眼。世界人権宣言で究極の価値は国家国民文化民族階級の集合体になった、価値は君主で人民は”もの”ではなくなった。
国際貿易量やグローバル経済の開放性は平和を促進する。”カント”の三角形①民主主義②開かれた経済③国際社会への参加。
法や国際組織が国家として機能することで暴力の合理的メリットが減った。外生的要因としては活版印刷技術が発明され人々の識字率が向上したことも大きい。自分の狭い視点から出て物事を見るようになり、道徳的価値や社会秩序に関する新しい考え方が芽生た。
人類がまだむき出しの暴力を制御できていなかった、というよりそれを悪いことと思っていなかった時代から、野蛮な暴力的な人々が何をどうしたら現代の平和な人々へと変容したのか?
マクロ的な統計とミクロ的な個人の環境条件や情報によって人の心理状態に変化が生じることに関するデータと理論を組み合わせ、歴史・哲学・政治といった視点を自在に行き来しながら分析。
カーネマン著の「ファスト&スロー」でも扱われる直感と論理について言及している。
”直感”とは”ヒューリスティック”と言い、物事を直感的につかむ人間の基本特性のことで、”論理”は”認知バイアス”と結び付き、人間が物事を評価するとき、 自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められる、またこれまでの経験や先入観にとらわれるなど、人の思考を無意識のうちに誘導するものである。
”人口”対”戦死者”の比率で言うと急速に安全になっているという。第二次世界大戦と第一次世界大戦はそれ以外の戦争をすべて合わせたよりも多くの死者を出したが、人口の増加は戦死者の増加を上回るのだと言う。
兵器の性能は向上しているが、今後暴力的な大惨事が実現する可能性は低いと筆者は考えている。
㊦巻に続く…
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