飯島企画業務日誌

図書倶楽部

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おはようございます😉

 

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『とわの庭』小川糸
序盤は盲目の娘”とわ”が、母親の愛を一身に受けて穏やかに育つ話しだなと感じていた。いつも、本を読んでくれて、大好きなパンケーキを焼いてくれる。外に出ない生活は違和感があったが、外の世界を知らなくても、2人なりの幸せの形があると思いたかった。徐々に母親の精神が不安定になってくると、この穏やかな物語はページを破り裂かれていき、生活の実体がとんでもない事だと、明らかになってくる。
これは、物語では無く何処かの誰かの実話なのかもしれない。例え今が不遇であっても誰かと出逢い、自分の中で少しずつ少しずつ生きる希望を見出していく。
帰って来なくなった母を”とわ”は一人で待ち続ける。小さな庭の草木や花々、鳥の声。生命の力に支えられ、光に守られて生き抜いていく。何があっても、前を向いて生きる。
この物語は「五感」だと感じた。この本からあふれ出す、一文一文に、それらが表現されている。
現代社会問題も訴えている要素が入っていて、ページをめくる手も止まってしまう。
私達は”とわ”に比べたら何不自由なく暮らしているが、感性は彼女より劣っている。見える事が他の感覚の邪魔をするのか。せっかく授かった、この感性を生かし切れていないと実感した。たまには、立ち止まって季節の移ろいを感じたり、周りを見渡して、生命力で溢れた植物や動物や地球の声を聞く事を意識して、淡々と毎日をただ消費している事に気付きたい。
心身共に傷を受けて、母にネガティブな感情を抱き、苦しむといった現実的な展開ではない。当たり前のような日常を、ただ日々たっぷりと味わいながら生きていく、そんな素敵なメッセージが、届いた。
救出されてからの日々、強くたくましい生き方への変化が魅力的で、盲導犬との出会い、ひと夏の熱い恋、目が見えないことで不便を感じることもあるけど、彼女は「匂い」で周囲の世界や人の存在を感じ取る。生きることの難しさと美しさをしなやかに描いた、とても希望の持てる物語だった。
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