飯島企画業務日誌

『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29』ジェイ・ルービン編 :村上春樹 序文

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おはようございます☀️

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『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29』ジェイ・ルービン編 :村上春樹 序文ルービン氏は、数多く古くからの日本を代表する作家の翻訳、近年特に「村上春樹」作品の翻訳家として世界にも知られ。
村上氏自身もルービン氏の日本語の意味を忠実に再現する作風での翻訳を信頼しています。ルービン氏は翻訳だけでなく、ワシントン・ハーバードで大学教授を歴任し、作家でもある。
村上春樹氏の序文では日本の近代・現代文学については詳しくないと謙虚に断ってはいるが、優れた作家ならではの緻密な読解が随所に光る。
近現代日本小説選集で、もともと英語圏読者のためにペンギン・ブックスの一冊として英訳で出版されたものですが、それが言わば「里帰り」して日本版が出ることになりました。
あえて作品の時代をバラバラにした章建ても面白い「日本と西洋」「忠実なる戦士」「男と女」「自然と記憶」「近代的生活、その他のナンセンス」「恐怖」「災厄 天災及び人災」は時系列よりも重要なのは「作風」と「主題」であると考え、レンタルビデオ屋の陳列方法に倣って、目次にあるようにテーマ別に7つのグループに分類したそうです。
村上春樹氏は序文でこう言ってます「人々は列を作り、福袋を争って…中身が何であるのか知らないままに…買い求める」「僕はついこの福袋の事を思いだし、よい意味でミステリアスな、そして射幸的な楽しみが間違いなくここにはある。」と。
名前も知らなかった作家たちと出合う。これも読書のひとつの楽しみだと知らされました。自分の好みではないと信じていた「食わず嫌い」のような感覚。自分には合わない作品も有りますが、それは少数で英語圏の読者を想定した「日本文学秘境めぐり」的、短編集。 この短篇を通じて、この国の精神性の幅広さ、深さ、闇も狂気もキテレツさも外国人の選ぶ短編から見る日本のイメージが新鮮に思えます。
「想像力は記憶のことだ」と
まるで日本という国の記憶は小説という創造力の中で生き続けているということを、本書で示しているかのようです。残酷な中に優しさがあるのが救い。物語を紡げても表現できない人もいる事もいるが理解し、掬ってくれる人もいる。ひとつの想念を文学として純化させ、想念を行為として純化させる事の間には大きな違いがある。言葉が空間を自然にすり抜けヴィヴィットでそこに漂う静かで安らかであっさりとした世界観。着実に物語を語り続け、物静かしさの中に芯の強い言葉。
近代日本人の体験を理解する上でインパクトを与えてきた短編。
特に印象に残った作品は
「興津弥五右衛門の遺書」「憂国」
「箱の中」「残りの花」「山姥の微笑」「物理の館物語」「忘れえぬ人々」
「工場のある街」「愛の夢とか」「肩の上の秘書」
「砂糖で満ちてゆく」「件」
「虫」「ピンク」「マーガレットは植える」
この本を開くと、ここに選ばれた作家のそれぞれの記憶の想像力が蘇り、さらりとした手触りのよい表紙に包まれ、生涯傍らに置いておきたいと思わせる一冊でした。

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