『ペスト』カミュ
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『ペスト』カミュ
まず、ペストとは?
ペスト菌の感染によって起きる感染症である。感染者の皮膚が内出血によって紫黒色になることで、別名”黒死病”とも呼ばれた。致命率は非常に高く、抗菌薬による治療が行われなかった場合、60%から90%に達する。感染ルートや臨床像によって”腺ペスト”、”肺ペスト”、”敗血症型ペスト”に分けられる。
ネズミなどげっ歯類を宿主とし、主に”ノミ”によって伝播されるほか、野生動物やペットからの直接感染や、ヒトーヒト間での飛沫感染もある。
古来複数回の世界的大流行が記録されており、14世紀に起きた大流行では、当時の世界人口、22%にあたる1億人が死亡したと推計されている。
ペストに感染したネズミから吸血したノミに刺された場合、まず刺された付近のリンパ節が腫れ、ついで腋下や鼠頸部のリンパ節が腫れて痛む。リンパ節はしばしばこぶし大にまで腫れ上がる。ペスト菌が肝臓や脾臓でも繁殖して毒素を生産するので、その毒素によって意識が混濁し心臓が衰弱して、治療しなければ数日で死亡する。■1947年出版のカミュの代表作、新型コロナウィルスが蔓延している現在の状況と酷似している。
最初に患者が出始め街に不安が立ちこめて来た頃、多くの人々は何でも無い大した事でも無いように振る舞うその”状況”、”心理”、”行動 ”の偏りは数週間前の我々のようだ。
現場の医師の早期の警鐘と行政の後手の対応、人々の精神的に過剰な心配と終息間際の過剰な楽観視とマスコミの効用、突然の移動禁止での隔離での離別で島流状態に不安と恐怖が募る。
”不条理”の象徴でもあるペストが蔓延することで、人々の生活がより”抽象化”していき、個人としての生き方が見失われていく。
ほとんど無機質で淡々としているのに、不意打ちのように心が揺さぶられる不思議なストーリー。
自然という抗えないもの、不条理なものも突き付けられた。逃げ出したい揺らぎと、向き合っていく使命感。
徐々に病疫が一人一人の問題となり、集団的史実となって、その正体を表すと、それに伴う個々の人間の変化が様々で、平等の苦しみのなかに、生き様があぶり出されるようになる。
増大する食糧問題の結果、市場には必需品が作り話みたいな値で売られていた。富裕層のみが不自由しなかったのに対し、ペストは公平に命を奪った。
病気は”自然”で、清浄は”思惑”なのだろう。身の回りが清浄なのは努力の成果であって、清浄でいるためには、絶え間ない努力が必要だと。
ペストの害毒は全ての種類の人生における”悪”の象徴として感じとられる。”死”や”病”や”苦痛”など、人生の根元的な”不条理”をペストに置き変え、人間の心の悪や弱さ、または貧苦、戦争、政治悪の象徴も含まれる。
”非常時”によって明るみにでる”常時”の社会の様相に加え、”常態”と化した”非常事態”の混沌について、淡々と示唆している。
圧縮された清潔な文体は、客観的に、なお無感動な描写につとめ、清潔さの影には抑えつけられた感動がひっそり漂っている。
社会の大きな縮図を垣間見たのではないか。予言書と言えないが、今読むとそんなことを感じさせる。毎日報道される各国のリアルな状況が見事に”シンクロ”するという不思議な臨場感を体験した。
不安に押しつぶされて利己的な行動に走ることだけは避け、全てを受け入れる覚悟が必要なのだろう。■私は、最後に宮崎嶺雄さんの”解説”(p.459~)を読んだのですが、先に解説を読んで登場人物などを頭に叩き込んでから読むと、より良く理解が出来ると想います。日本での”緊急事態宣言”は”おこもり”と言う言葉でマスコミが発言して各自の自粛と自宅隔離を”要請”されていますが、是非この本を読んで生易しい言葉では伝わらない危機管理や恐怖、孤独などを色々な立場の人間の思想を通して感じてみては如何でしょうか。