『文豪缶詰プラン』
おはようございます😉
今回ご紹介するのは、文京区・本郷。天下の東京大学が近いせいか、かつてここは大きな旅館街で、100軒以上の宿が軒を連ねていました。現在は「鳳明館本館」「台町別館」「森川別館」の3つと、新しい宿を残すのみ。本館は、築100年余りの登録有形文化財です。3つの「鳳明館」で最も大きな「森川別館」は、伝統的な木造建築が館内のいたるところに光る、名人たちの職人ワザ。昭和レトロそのものを味わえます。森川別館が打ち出したプランが大人気で、たちまち売り切れになったと言います。このご時勢で、相次いだ宿泊キャンセルへの対抗策として提案したのは、遊び心あふれる奇想天外な企画でした。その名も『文豪缶詰プラン』。昔の文豪や作家先生というのは、大きな仕事にかかるとき、集中力を高めるために旅館にこもりました。これは出版社のほうが先生を逃がさず、原稿の上りを急がせるために「宿を用意しました!」というケースも多かったそうです。有名なところでは、『火宅の人』の檀一雄がこもったお茶の水「山の上ホテル」や、山田洋次監督が『男はつらいよ』の構想を練った“ホン書き旅館”こと神楽坂「和可菜」。そして本郷には石川啄木、北原白秋、手塚治虫などが投宿して、執筆に没頭したと言います。では『文豪缶詰プラン』の中身をご紹介しましょう。用意されたプランは1泊、または2泊。時節柄、お客様(先生)をコロナ感染から守るために、部屋や共用部分の浴場などにはアルコール消毒液、次亜塩素酸水を完備。夕方6時ごろ、執筆の進捗をうかがう電話が入ります。「先生、進んでますか? 締め切りは明日の朝10時、何とかお願いします」翌朝は希望の時間に、原稿受け取りの電話が入ります。「先生、おはようございます。10時に受け取りにまいりますので、よろしく」オプションで編集担当者をつけることもできるそうです。先生が逃げないように隣の部屋に待機して、ときどき進捗状況を聞きます。この編集担当者はニコリともしませんが、厳しさは好みで変えられるとか。編集者は、外で見張ることもできます。先生が部屋にいるかどうか、下の道路からジッと見張っています。「この窓から逃げ出せないものか」と窓の下をのぞくと、編集者の彼と目が合ったりもします。これは、”手塚治虫”先生の実話を取り入れたプランだそうです。さらにおかしいのは、本妻と愛人が鉢合わせするプラン。「あんた、どこの馬の骨なの!」「先生の心はね、アタシのもんだよ!」…部屋の前で、本妻と愛人がリアルに争ってくれます。スリル満点! 先日の先生は、このオプションを申し込んだそうです。朝食は免疫力がアップするシャケ、納豆、乳製品などの和食です。差し入れ、持ち込みも自由。ただし、本物の愛人を持ち込むのはダメだそうです。3月14日に予約を開始したところ、その日のうちに完売。『文豪缶詰プラン』を企画した営業担当の海津智子さんは、「コロナ対策で始めたプランなのですが、これからも続けたいですね」と語ります。