ユヴァル・ノア・ハラリが警告する『データの罠』4/4
おはようございます😉
ユヴァル・ノア・ハラリが警告する『データの罠』4/4
自分自身のデータの個人所有は、前述のどちらの選択肢よりも魅力的に思えるかもしれないが、それが実際には何を意味するかははっきりしない。私たちは土地の所有の規制については、何千年にも及ぶ経験がある。農地の周りに柵を巡らし、門に番人を置き、出入りを制限する方法は心得ている。
過去2世紀の間に、私たちは産業の所有を非常に巧妙に規制するようになった。たとえば、今日私は株式を買うことで、ゼネラルモーターズやトヨタの一部を所有できる。だが私たちには、データの所有を規制する経験はあまりない。それは本質的に、はるかに難しい任務だ。データは土地や機械とは違い、どこにでもあると同時にどこにもなく、光速で移動でき、好きなだけコピーを作れるからだ。
だから私たちは弁護士や政治家、哲学者、さらには詩人にさえも、この難問、すなわちデータの所有をどう規制するかという問題に注意を向けるよう求めたほうがいい。これこそおそらく、私たちの時代の最も重要な政治的疑問だろう。早々にこの疑問に答えられなければ、私たちの社会政治制度は崩壊しかねない。人々はすでに、来るべき大変動に感づいている。だから世界中の人々が自由主義の物語への信頼を失いかけているのかもしれない。ほんの10年前にはたまらないほど魅力的に見えた、自由主義の物語への信頼を。
それでは、私たちはここからどうやって前へ進み、バイオテクノロジー革命とIT革命がもたらす途方もない課題の数々に対処するべきなのか? そもそも世界を混乱させた当の科学者や起業家が、ひょっとしたら何らかのテクノロジー上の解決策を立案できるだろうか? たとえば、ネットワーク化されたアルゴリズムは、あらゆるデータを集団的に所有し、将来における生命の発展を監督するグローバルな人間コミュニティの足場を形成できるだろうか? グローバルな不平等が増し、社会的な緊張が世界中で強まったら、ことによるとマーク・ザッカーバーグは、自分の20億の友達に呼びかけ、力を合わせて何かいっしょにやろうとするだろうか?
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