『ミラーワールド』4/12
おはようございます😉
『ミラーワールド』4/12
ミラーワールドの片鱗が垣間見られる場はゲームだけではない。マジックリープとAR分野で競合するマイクロソフトは、ARデヴァイス”ホロレンズ”を2016年に発売している。ホロレンズはヘッドストラップにかぶせる透過バイザーだ。ひとたび電源を入れて立ち上げると、ホロレンズはあなたのいる部屋をマッピングする。あなたは手を動かし、目の前に浮かんだメニューの一覧からアプリや体験を選択操作できる。そのひとつを選べば、まるでパソコンやテレビの画面のようなヴァーチャルスクリーンが目の前に現れるのだ。
マイクロソフトが考えるホロレンズのビジョンは、「未来のオフィス」というシンプルなものだ。たとえどこにいようと、好きなだけスクリーンを目の前に出して、その場で働くことができる。地球上で働く人の8割は自分のデスクをもっていないという。そうしたデスクなしの働き手はいまや、倉庫や工場でホロレンズを装着し、3Dのモデルをつくったりトレーニングを受けたりしているのだ。
テスラは最近、工場生産にARを使うふたつの特許を申請した。ロジスティクス企業のTrimbleは、ホロレンズが備え付けられた安全性認可済みの保護ヘルメットをつくっている。
2018年に米国陸軍は、まさにデスクいらずと言える業務のためにホロレンズのアップグレード・モデルを10万セット購入すると発表した。戦場で敵に一歩先んじ、「殺傷力を上げる」ためだという。実際のところ、家庭内でというよりも職場でARグラスを装着する機会のほうがずっと早くやってきそうだ(あの悪評高かったGoogle Glassでさえ、いまや工場へと静かに浸透しているのだから)。
■『WIRED』日本版編集部もある東京の渋谷は大規模な再開発が進められ、未来の都市計画のためにさまざまなメタデータが活用されている。そのひとつが、クリエイティヴコモンズとして公開されている渋谷地下街の点群データだ。ミラーワールドの構築には、こうしたデジタル化されたメタデータがかかせない。
■すべてのものが“デジタルツイン”をもつ
ミラーワールドのなかでは、すべてのものが対となる。NASAのエンジニアたちは、先んじて1960年代にこのコンセプトをもっていた。宇宙へと送るすべてのマシンの複製をつくっておくことで、何千マイルも彼方の宇宙で起こったどんな機材の不具合も、目の前の複製でトラブルシュートすることができたのだ。これがコンピューターシミュレーションへと発展したものが、デジタルツインだ。
■世界最大の企業のひとつゼネラル・エレクトリック(以下GE)が製造する巨大で複雑な機械は、もし誤作動が起きれば容易に人々を殺してしまう。発電機、原子力潜水艦の原子炉、石油精製コントロールシステム、ジェットタービン。こうした巨大な機械を設計し、組み立て、運用するために、GEはNASAのやり方を拝借し、それぞれの機械のデジタルツインをつくり始めたのだ。各部品が3次元空間で再現され、対応するバーチャルなロケーションに配置されるのだ。
記事画像https://wired.jp/special/2019/mirrorworld-next-big-platform(雑誌『WIRED』日本版VOL.33より転載)