飯島企画業務日誌

『プロジェクト・インソムニア』結城真一郎

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おはようございます😉

図書倶楽部

『プロジェクト・インソムニア』結城真一郎

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「インソムニア」とは「不眠症」のこと。ここに登場する人物は不眠に関わらず何らかの疾患を持っている。現実逃避して、夢の中の夢を見る。皆が、”フェリキタス”と言う睡眠導入剤”サプリ”を服用し、神経伝物質を調整し、心地良い快眠ライフを実現させたのだ。このサプリを開発したのが”ソムニア社”で立て続けに信じがたい程の研究結果を発表し、世間の注目を集めているベンチャー企業。

選ばれた被験者は頭にカチッっとチップを埋め込まれ、それぞれの”顕在意識”と”潜在意識”を同期して毎日の就寝と起床の時間が設定される。すると、皆が寝ると同じ夢の中に現れ、何でも出来る夢の国に現れる。飛びたいと思えば飛べるし、思った物や人物を瞬時に実現させられる。

”明晰無”とは自身が夢の中だと認識しながら意思決定をする事。この状態が維持・継続出来る世界だ。現実との違いは、”他人から見た自分”と”自分が意識したい自分”、この世界では自分の理想の姿で現れる。参加者が皆、そうなのだ。

メンバーが夢の中で集い冒険し現実では不可能な夢を実現しようとする、桃源郷のような世界で危険(死)はないはずだったが…

他の被験者にある日突然、まだ存在不明な悪意の存在を打ち明けられる。次々に襲う事態は、桃源郷を恐怖に陥らせる衝激があり、物語の巧みな設定を生かしたものになっている。

そして事態は他の被験者の死に発展し、現実ではただの心筋梗塞として扱われる事件は、実は夢の中の殺人であった。だがここで疑問が立ちはだかる『ユメトピア』の中で人は死なないはずなのだ。不可能状況に、事件は本格ミステリの雰囲気をまとっていきながら、次々と被験者が死んでいき不安定な心理や、理解しやすい構成でページをめくる手を進めていく。犯人当探しは思いのほか単純だが、設定を生かした明瞭だ。トリックも意表を衝いているし、それを裏付けするとある伏線は注意深く読めば、そこかしこにヒントがあり、それも含めて解かれていく面白さに一気読み。犯人の抱える秘密を皮切りに、巧妙に覆い隠された伏線が続々と回収され、犯人の行動の背景が描き出されていく。

犯人の秘密がトリックに関わってくるが、それがもたらす”欲求”が、主人公に「狂ってるよ!」と言わしめる、「狂人の発想」に繋がり、事件を引き起こす原因となる。それがこの設定ならではの感情であり、特殊設定ミステリとして非常に秀逸である。

それでも作者の高い構成力と現実感のある手触感は飽和気味のミステリーに一石を投じるだけの潜在的な可能性が感じられる。

次の作品が強く期待される。

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