『書きたい人のためのミステリー入門』新井久幸
おはようございます😉
『書きたい人のためのミステリー入門』新井久幸
20年近く新人賞の事務局で下読みをして、何百本という応募原稿を読んできて、ミステリーは「暗黙の了解」の多いジャンルで、いわゆる「お約束」を踏まえて、初心者向けに解りやすく解説している。
”ミステリー”の「三種の神器」とは
①神秘的なこと。不思議な出来事。謎。
②怪奇・幻想
③伏線
文章は映像に対して分が悪いと言う人もいるが、逆に文章でしか表現出来ないこともある。”見えないもの”を”見せる”ことだ。文章表現は読む人の脳内だけに浮かび上がる映像を自在に作り出せるのだ。おそらく自分では決して見ることの出来ない光景なのだが、文章と想像力で、見えないはずの風景も描き出すことができる。
そして、”現実”がリアルさを失う場合がある。”事実は小説より奇なり”と言うが、日々のニュースを見聞きしていれば解る通り、現実社会で起こる事件・出来事は、想像を絶するものばかりだ。特に理由も無く「人を殺してみたかった」だけの殺人や異常な偏見に基づいた犯行など、小説で読んだら「いくら何でも、それは無いだろう」と、なってしまう。小説における”リアル”とは現実世界と地続きなことがリアルなので無く、一般論として受け入れらるのでも無く、作品世界に乱れがなく、流れるようなストーリーを構築することが、読者の心を掴むことに繋がる。
そもそも、小説はフィクションであって現実では無い。良く言う”世界観”とは、奇抜な設定を競う為では無く、小説世界をキッチリ作り、どんなに特殊な世界でも、描かれている事に真実味があり、その中で辻褄が合い、整合性がとれ、感情移入出来れば、そこは確かに”存在”する世界になり、充分なリアリティーを持つ。
人は、無意識に周辺情報を取捨選択して生きている。周りの世界を同じテンションで描写したら、それは人間の目を通した世界ではなく、レンズを通した世界になる。カメラで世界を見るのか、誰かの目を通して世界を見るのか。そこを意識するだけで、世界の切り取り方は別物になる。
最後に、著者からの本著の締めの言葉
「この本が、そういう出会いの一助になったり、書く側でも、読む側でも、一つでもいいから何かの発見を提供できたのなら、とても嬉しい。」